真夜中の園
03
足をねじりあわせ、身をよじってカガリはなんとか疼きを逃がそうとしたが。
(だめ……)
秘部がひくついているのがわかる。
意識すればするほどたまらなくなってきて……。
カガリは誘惑に負けてしまった。
「っ……、く」
アスランの視線からなるべく逃れるように、顔をそらし、カガリはまぶたをぎゅっと閉じた。
あわせた足の間にそろりと手を伸ばす。
軽く触れるだけで秘部が濡れているのがわかる。
とにかく触ってみると、アスランが触れたときと同じ音がした。
「俺がするみたいにしてごらん」
ぎこちなく触るだけのカガリの自慰に、アスランがうながす。
「ばか、見るな……んっ」
自慰の経験がないカガリは、自らの秘部の構造もよく知らないのだ。
アスランはどうしてカガリの快感を引き出すのか。
触れても触れても、上手くいかない。
焦れったくて、カガリは体を縮めて、シーツを掴んだ。
「はぁ……ぅ、んっ」
アスランが見ているのはわかっているのだが、カガリは遠慮などしていられなくなってきた。
体を丸めて、激しく秘部を掻き回す。
苦しそうに自慰に没頭するカガリを、アスランは満足げに見下ろしていた。
(どうして……っ)
恥ずかしさに堪えて、彼の言うとおりにしたのに、いつまでたっても、カガリの体は高揚しない。
触らないでいるよりはましだが、かといって疼きを昇華することもできない。
つたない自慰はカガリをよけいに追い詰めていた。
カガリはほとんど泣きながらアスランに助けを求めた。
「あす…らん……」
「なに?」
ことさらに優しく、アスランはカガリに顔を寄せる。
もう甘えてしまいたくて、カガリは子供のようにねだった。
「アスラン、お願い……もう許して」
震えながら、カガリは囁いた。
「うん……どうして欲しい?」
乱れた金髪を直してやりながらアスランはたずねた。
「どうしてって……」
わかっているくせに聞くのだ。
「それが言えたら今日は許してあげるよ」
「おまえ、ほんとに意地悪だ……っ」
「俺は十分優しいぞ。本気でカガリをいじめようと思ったらこんなものじゃ済まないからな」
ほら、言わないと時間切れにするぞと、アスランは笑った。
「う……、えっと」
カガリは手で顔を隠しながらやっと言った。
「アスランの……が、欲しい」
「へえ……」
アスランはまたそらとぼけた返答をする。
カガリはさすがに怒ってもいいだろうと思った。
「も、もういいだろ!ばか。そんなに許せないならもう絶対みんなの前でぼろはださない……っ」
「いや……」
アスランは林檎のような頬に軽くキスをした。
「あんな可愛いカガリが見られるなら、どんどん約束なんか破ってくれてもいいかな」
くすくすと笑いながらアスランはカガリを仰向けの体制に直した。
まったく、こちらがどれだけ恥ずかしい思いをしたと思っているのか。
「うう……、ばかばかばかっ」
「はいはい」
胸を叩いてきたカガリの手をアスランは捕まえ、カガリの体を開かせた。
「そろそろいいかな? 正直言うと俺もそろそろ限界なんだ」
瞳を覗き込み、彼はたずねた。
何がと問わずともわかるカガリは、小さくうなずき返した。
情事のたびに毎度のようにいじめられるのだが、彼はいつも必ずここで確認をしてくれるのだ。
散々恥ずかしい思いをさせながらも、しかし、アスランの触れてくる指も唇も限りなく愛おしげだった。
それを感じるとき、とても幸せだと思う。
きっちり服を着ていたアスランも、それらをシーツに脱ぎ捨てると、カガリのひざに手を置いた。
「カガリ、開いて」
こじ開けられるのならまだしも、自分から開いて見せろと言われて、抵抗なくできるカガリではなかったが。
彼の声がとても優しく誘っていたので、少しずつではあったが、カガリは足を広げた。
「そう……」
大きく開くと、秘部まで開けて、ぱっくりと割れたのが感覚でわかる。
自分がとてもいやらしい格好をしているという自覚で、カガリの秘部から蜜が漏れる。
「こんな君を知っているのは世界で俺だけなんだよな」
アスランは優越感のこもった口調で言った。
少女に覆いかぶさると、目をつぶり顔を背けていたカガリの顔を自分に向けさせた。
「ごめん、カガリが可愛すぎるから今日は手加減できないかもしれない」
「いっつもしてない……」
カガリがすねたように言うとアスランはわざとらしく首を傾げた。
「そうかな?」
「……そうだよ、ばか」
自然と顔が近づき、二人の唇が触れる。
少しだけ舌を絡めあって、キスが終わると、アスランは自身をカガリに埋めていった。
熱を持った異物が押し入ってくる感覚に、カガリは顔をしかめた。
カガリの膣内は十分に潤っていたので、ひっかかりはなく挿入はスムーズだったが、それでも膨張したアスランをすんなり受け入れるのは難しかった。
「大丈夫か?」
抑えた息遣いが心配だったのだろう、自身が入りきると動かずにアスランは聞いた。
「もしかして痛いのか……?」
「ん……や、痛くはないぞ……ただ、なんだか」
いつもよりおっきい気がするから、とカガリが小声で打ち明けると、アスランは吹きだした。
「ごめん、そうかもしれないな。今日は俺もだいぶ我慢したし……」
そこで声を落とすと、カガリの耳に続きを囁いた。
「自分でするカガリがものすごく可愛かったしな」
「あれはもう忘れろってっ」
「いやだな。なんなら今度は俺がもっと上手なしかたを教えてあげるよ」
当分はあれをネタにされそうな予感がして、カガリは誘惑に負けたことを思いきり後悔した。
「カガリ……そろそろ動いても平気か?」
アスランは膣口付近を指でなぞった。
「あ、……うん」
内部も慣れてきて、緊張はやわらいでいた。
アスランがゆっくりと抜き差しをすると、快感が昇ってきた。
「はぁ……気持ちいい」
味わうようにじっくり動いてみて、アスランはため息をついた。
そうして、カガリの腰を両手で支える。
「手加減……しなくていいんだよな?」
アスランは切なそうに眉を寄せていて、よほど堪え難かったのか、いきなり律動の速度を上げた。
「あっ、や! アスラ……っ」
カガリは驚いて腰を退こうとしたが、力も入らない上に、あらかじめアスランの手で腰は固定されてしまっていた。
律動に合わせてベッドが大きく軋む。
カガリの愛液と、アスランの先走りが、繋がった場所から溢れ、雫が飛び散るくらいに、アスランの突き上げは激しい。
「きゃ、あっ!あ!……っふ」
口から悲鳴のような声が出てしまう。
誰かに聞かれないとも限らず、カガリは手の甲を噛んで声を殺した。
「く……、我慢されると……よけいに鳴かせたくなるんだが」
律動を続けながら、アスランはカガリのひざ裏に手を入れて、両足を持ち上げた。
劣情を煽るような姿勢をとらされる。
「ひぅ、……あ、ん! んっ」
角度を変えたアスランに、膣内の敏感な場所を刺激されて、口から嬌声が飛び出てしまった。
それを、あわてて両手で押さえ込む。
「ふ……、可愛い、カガリ」
眉根を寄せていたアスランから笑みがこぼれた。
涙を零しながら声を必死で隠すカガリと、熱い吐息を吐きながら攻めるアスラン。
外見だけ見ると、二人の姿はどこか禁忌を侵しているように、秘やかで隠微だった。
それをお互いも感じていて、背徳感がいっそう二人を興奮させた。
「あ、……アスラン! もぅ……んっ」
真っ白になりそうな予感があって、カガリはアスランを求めて腕を伸ばした。
絶頂の時は肌を重ねて、愛しい人をできるかぎりで味わいたかった。
「俺…も……っ、カガリ」
カガリの腕に応えて、アスランもカガリの体をすくい上げるように抱き締めた。
にじんだ汗で滑る体を合わせて、二人はお互いを高め、貪った。
熱と、甘ったるく淫らな匂いに満ちた部屋に、押し殺した開放の声が聞こえ、しばらくしてベッドのきしみがやんだ。
「はぁ……はぁ、は」
荒い息を吐きながら、二人はきつく抱き合っていた。
(……気持ちいい)
余韻が下半身から沸き上がり、指先まで響く。
放たれたアスランの想いが、温かさをともなって体の中心に満ちる感覚が心地よかった。
呼吸が落ち着くまで抱き合って、アスランは体を離すものだと思っていたのだが、抱いていた手のひらが肌をはい回りはじめて、カガリは声を上げた。
「お、おまえな……ちょっとくらい間を」
「もったいない」
彼の手は体をまさぐり、唇での愛撫も加わる。
「ふ……ゃ、は」
高ぶりの醒めきっていないカガリの体はよけいなくらいに反応を返す。
カガリの体の中心がうずきだすのと同時に、その中に入りっぱなしのアスランも硬さを取り戻してきた。
「ぜんぜん足りないよ……カガリ」
物足りなさを訴えるように、アスランは甘えた声で言った。
「ばか、明日も……、任務が」
「一日くらい平気だよ」
「おまえ、それでも隊長かよぉっ」
「そうだな、隊長命令だ。カガリ・ユラ・アスハ、君は明日は非番だよ」
無邪気なくらいににっこりと笑った顔が妙に歳相応に見えて、不覚にもカガリは可愛いと思ってしまった。
そんな感想を言っても、きっと彼はむっとするだけなのだろうけど。
禁欲的な石造りの兵舎の一室で、二人は蜜のような夜を過ごした。
一歩その部屋を出れば、冷徹な上官と、反抗的な新米騎士になる二人だったが。
真夜中に、彩り艶やかに薫りを放つ花を咲かせることは、夜だけが知る秘密である。
リクエストを頂いて書いた作品でした。
十年以上前に書いたものを読み返すってなかなかの苦行でした。
拙いものでありますが、読んでくださってありがとうございました。
2007/08/09(初出)
2018/02/23